自動車人/張恒
米EDAソフトウェアをファーウェイ(Huawei)に対して供給停止に続き、米国政府は5月23日付け、ハルビン工科大学とハルビン工程大学をエンティティリストに追加し、産業用ソフトウェアのMATLABの使用を禁止した。
MATLABは米MathWorks社製の商用数学ソフトウェアであり、アルゴリズム開発、データ可視化、データ分析などに広く使用されている。モデリングシミュレーション、電子通信、自動車、航空、電力エネルギー、経済金融、生物医学などの分野をカバーし、関連する理科系の学生や研究者などにとっては「必要不可欠のソフトウェア」で、利用頻度がOfficeに次ぐものだと思われる。
閉じ込められた後、ハルビン工科大学とハルビン工程大学の教師と学生は、論文発表の際、MATLABチャートを含むチャートを使用することができず、使用した場合、起訴されるリスクがある。
周知されている通り、チップは中国のものづくりの短所だ。産業用ソフトウェアはチップにめけない程度、重要なのだ。表面上では、中国は巨大なプログラマー人数を保有しているが、彼らのほとんど、アプリケーションソフトウェアを開発しており、基本的な産業用ソフトウェアの開発人材は数えられるもので、チップ業界よりも少ない見方もある。
自動車業界では、近年来の流行語として、ソフトウェアが自動車を定義するとある。これについて、コンピュータや携帯電話などのようにアプリケーションを使用して自動車を定義すると誤解されがちだ。ソフトウェアが自動車を定義するとは、産業用ソフトウェアを使用して自動車を定義することを指し、自動車のインテリジェント化に向けて成長させていく必要不可欠な部分だ。
当然のことながら、MATLABが自動車産業に対する影響は重要だ。
自動車業界では、通常、独Despace社製の自動車業界向けソリューションを使用しているケースが多い。同社のソリューションはソースコードをカスタマイズ化し、ハードウェアとシームレスに接続し、プロトタイプを迅速に構築するなどにより、Model in loopとHardware in loopなどシミュレーション作業を一貫して実現することができる。VW社での実証効果があり、FAW、奇瑞、宇通などのローカルメーカーも当該ソリューションを使用している。このDespaceという開発ツールはまさにMATLABに基づいて開発されたものだ。
単軸ガスタービンなどの大規模で複雑で非線形な熱力システムなどに、MATLABなどのソフトウェアを用いてシミュレーションを行えば、良好な結果が得られる。
これはまた、A株市場でソフトウェアサービス関係株の株価が上昇した理由だ。 過去2年間、A株市場では、チップ産業関係株が異常に高く評価されている。 新たな問題を目の前にして、産業用ソフトウェアの分野では、中国は自立せざるを得なくなる。
産業用ソフトウェアが完全に使用禁止となると、中国の自動車産業、特にローカルメーカーはどのような影響を来すか想像しにくい。
これに対し、人民日報は「国産産業用ソフトウェアを成長させる」との記事を発表。中国国家教育部は6月19日付け、公式ウェブサイトに「教育部弁公庁と産業・情報化部弁公庁が発行する通知」を発行した。同「通知」はソフトウェア人材の育成と特殊能力を強化するよう呼びかけた。主要な基本ソフトウェア、大規模な産業用ソフトウェア、特定業界向けのアプリケーションソフトウェア、新興プラットフォームソフトウェア、組込みソフトウェアを巡り、特別な人材のニーズに対して、高度なソフトウェアアーキテクチャ、エンジニアリング方法、アルゴリズムモデル教育を強化するとした。
中国の自動車メーカー、特に国有自動車メーカーグループは、すでに基礎的な技術を共同研究開発する重要性を認識している。中国が基礎レベルの産業用ソフトウェアが欠如している場合、自動車産業における基礎的な研究開発の一部はハードルの高いものとなってしまう。
6月29日、中国兵器機器グループ、中国一汽、東風汽車、長安汽車、江寧経開科技が共同出資し、江蘇省南京市で中国汽車創智科技有限公司の設立したと同時、当該拠点のプロジェクト発足式を行った。中国汽車創智科技有限公司は、新エネルギーとインテリジェント化、コネクティドした自動車向け、先進した、共通性がある、プラットフォーム、コア技術の研究開発と産業化に位置づける。