自動車人/張恒
2020年の上半期、中国の自動車市場は、「大きな地震」に見舞われたが、資本市場に移りだされているのが別の光景だ。A株市場では、自動車セクターは忘れられたコーナーとなり、香港株市場では、少しだけましだとしか言えない。
2020年6月24日の終値では、上海証券取引所総合株価指数は2.33%、自動車セクターは3.05%下落した。 一方、香港のハンセン指数は12.1%下落し、自動車セクターは横ばいとなった。 香港株の続落は地政学の緊張を反映しているようだ。
2020年上半期の自動車販売台数において、特に乗用車は「V」字型回復を果たしたが、A株市場の自動車関係株が同じ動きを見せていない。香港の自動車株は自動車の市場状況と類似する動きを示した。
4月、5月、6月の自動車需要の回復に伴い、細分化市場に関連する自動車株がポジティブな動きをみせた。A株市場における自動車エレクトロニクスのセクターは13.1%上昇した。 車載電子システム端末のリーディングカンパニーといわれる徳賽西威（Desay SV 002920.SH）は、今年に入って以来、株価が82.2%も上昇した。
徳賽西威の主な事業は、車載用の従来の機械式メーターから液晶スマートメーターへのアップグレードである。2019年には一汽トヨタ、長安フォード、レクサスなどの合弁ブランドを突破しマーケットインすることに成功した。 2019年第4四半期と2020年第1四半期の売上高は前年同期比それぞれ33%増、14.2%増、純利益はそれぞれ91%増、25%増だった。
完成車メーカー市場では、注目を集めたのは、比亜迪（BYD）と蔚来汽車（NIO）だ。 2020年、比亜迪のA株は50.4%上昇し、 H株は58.3%上昇した。 その駆動力は2つからなると思われる。一つはブレードバッテリー技術が投資家から広く期待されること。もう1つは新設の比亜迪半導体会社にセコイア・キャピタル（Sequoia Capital）、中金資本（CICCキャピタル）、中国国家レベル産業資本の「国投創新（Sdic Fund）」を含む戦略的投資家を導入する計画を発表したことだ。
米中摩擦の影響を受けて、半導体関係の株は、A株市場全体においてもっとも上昇したセクターだ。
2020年以降、「中国概念株」の蔚来汽車は株価が79.4%上昇した。 2019年10月に1.19ドルに達した後、累積上昇幅は5倍になった。 創業者の李斌氏は、資金調達においてユニークな力の持ち主だ。2020年以降、転換社債の発行、戦略的投資家の導入、ADSの発行などを通じて、総額約18億5000万ドルの資金を調達した。
長安汽車の株価は2020年以来、人民元10元（日本円＝約160円）付近から11.33元（日本円＝約181円）に上昇した。 2018年末からジワリと右肩上がりのトレンドを形成しており、株価は倍増している。 5月の自動車販売台数は17万4000台で、前年同期比54.28%増、1-5月は63万6600台で、前年同期比6.29%減にとどまった。 このうち、長安は5月には12万5300台を販売し、前年同期比42.2%増となった。強い製品力が成長サイクルを回しているだろう。
投資家にとって、自動車業界はもはや完成車製造を中心とした産業ではなくなる。 彼らの観点では、自動車業界は、すでにテスラ関連、人工知能関連、自動車エレクトロニクス関連、パワーバッテリー関連、チップ関連など無数のサブセグメントに細分化されている。比亜迪、徳賽西威とと蔚来汽車は、その代表だ。 クルマづくりはあくまでもその中の一つと数えられ、変化中にある「自動車産業」全体を代表しているとますます言い難くなる。このような時代の背景から、自動車セクターは明るいポイントがないものの、それに紐づける多くの技術関連株は、資本市場では人気を呼んでいる。 これは、クルマづくりが重要ではないという意味合いではない。長安汽車の株価が倍増したのもプラスの例だ。
需要がボトルネックの時期を迎え、尚且つこれから技術変革を迎える自動車業界は、イノベーションに頼って時代を先取りする企業だけが、より多くの露出するチャンスがあるだろう。
