自動車人/張敏
中国自動車市場では、ローカルブランドの成長は上位メーカに集中していく兆候が露呈している。コロナ禍がそれを加速させた。
今年5月、ローカルブランドが占める市場シェアは全体的に縮小したものの、そのうちの勝ち組である吉利汽車、長安汽車、長城汽車などの上位メーカは良い業績を上げてきた。全面的に復活した紅旗ブランドも強力な成長を実現した。
SUV市場において、販売台数の上位10社のうち、ローカルブランドがその4席を占める。哈弗H6、長安CS75と吉利博越の3車種が上位3位に順位を並べた。この良い業績を上げた要因は主流のローカルブランドが古い車種からモデルチェンジを加速させ、既存のモジュール化したアーキテクチャをベースに細分化したセグメントに向け、より多くの競争力ある車種を開発したことにあるとみられる。
第三次創業という構造改革が結果に結び、長安汽車は従来にあるポジションに向かい、勢いよく回帰しつつある。長安系列のローカルブランドは5月の販売台数が125,320台、前年同期比42.2%増となり、その成長スピードが市場で注目を集めた。長城汽車は5月の販売台数が81,901台、前年同期比31%増となり、吉利汽車は5月の販売台数が108,822台、前年同期比約20%増となった。
データに鑑みると、ローカルブランドにおけるマタイ効果が表れつつあると言える。
市場全体におけるシェアが縮小したものの、主流メーカーのシェアが逆に増えてきた。危機とチャンスが共存する市場環境では、主流の上位メーカが穏やかに成長し、ブランド力も引き続き向上していくのだろう。合資メーカの攻勢を受け、より多くのリソースを保有し、投資による布石をしておいたローカルメーカはブランド実力の育成を加速させ、下位ブランドの市場シェアを食いつぶしていく。
長安汽車董事長の朱華栄氏が『自動車人』に対して、「ローカルブランドの現状はコロナ禍の影響によって引き起こしたものではなく、それを加速させられたものだ。」と語る。朱華栄氏から見れば、ローカルの主流メーカーはミドル層にいる合資系メーカーとは混戦している。将来では、上位合資メーカからの競争に直面する局面が必至だ。小規模の非主流メーカーがますます難航していく。「その他の非市場的な要素はなければ、基本的に経営が破綻してしまい、統廃合されるに間違いない。」と指摘する。
ローカルメーカ―は道が分かれる中、ブランドを以て成長をけん引する方向性がますます明らかなものになる。
「新型コロナの影響で、自動車市場が激しいシャッフルを迎え、ブランド力が売上に対する影響はより一層明らかになっている。ローカルブランドが全体に占めるシェアが縮小したが、そのうちの上位メーカーは依然、明るい成績を取ることができた。製品力とブランドの影響力を向上させることがローカルブランドにとって最も重要な課題だ」と中国汽車工業協会の副総エンジニアの許海東氏が語った。
吉利汽車グループの副総裁の馮擎峰氏も『自動車人』のインタビューに応じた。馮氏によると、今回の新型コロナでは、車の購入予算が15万人民元以下のユーザに対する影響は一番大きい。また、この市場レンジはローカルメーカーが集中的に狙っているところでもある。同じくこの市場レンジを狙っている合資系メーカーも同様にプレッシャーが大きいはずだ。「ローカルブランドは製品力が優れるものの、ブランド力には不足している。これが補強すべき課題だ」と指摘する。
市場競争がますます激しい今頃、ブランド力と製品の競争力こそは有名なブランドと技術力が強い製品を選ぶよう消費者の行動を促すものだ。
主流のローカルメーカ―が彼ら自身の不足を補填する試みをしている。吉利汽車、長安汽車、長城汽車のいずれも、ブランド戦略への取り組みにより強く力を入れている。
自動車業界を見渡すと、「哈弗大狗(仮=Haval GiantDog)」で注目を集めた長城汽車、モジュール型アーキテクチャによるクルマづくりの時代が殺到したと宣言した吉利汽車、あるいは智能化を集大成大したUNI-Tのプロモーションを密に行ってきた長安汽車、これら主流中国ローカルメーカーはブランドにおけるプロモーションの手法がますます熟練してきた。
それに対して、一部のローカルメーカーは声を消しつつある。優位性のあるブランドによる市場攻略を受け、これらのメーカーは打つ手がなくなり、価格戦に巻き込まれてしまう。
ローカルメーカーのシェアを伸ばす至難課題は自社ブランドの影響力を如何に向上させることだ。しかし、ローカルメーカーにとって、その課題解決に必要な時間は決して多くないものだろう。